New Editor Experiences/概念の理解

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新人編集者体験プロジェクトの作業を暫定的にどこに集中させるか、2つの領域を選んでおり、そのうちの1つがウィキペディアの概念的理解に決定しました。

新人編集者および編集者になりそうな人は、しばしばウィキペディアのコア概念のいくつかを知らないことがあります。 ウィキペディアの組織モデルの重要な部分を理解していないかもしれません。ウィキペディアは作成および運営をボランティアのコミュニティが担当すること、編集に許可は必要ないこと、ウィキペディアの記事作成は共同作業と反復的な変更を採用することなどです。 コンテンツを導く重要な方針、つまり検証可能性、中立であること、知名度などを理解していないかもしれません。

これら理解の格差は、いろいろな形に現れます。 基本もあれば(誰でも編集できるとわかってはいるけど資格のある専門家にばかり編集をお勧めしているという誤解)、高度なものもあります(議論の余地のない事実を引用「しない」選択が認められるとは気づいていないなど)。 場合によっては、利用者に自分が知らない概念があるという自覚があります(例えばある人はウィキペディアの記載内容には限界があるとわかったものの、じゃあ具体的にその限界は何かわからないという無力感に陥ってしまうなど。) あるいは他の人は知識の格差が存在すると気づかないまま、それに苦しんでいます(たとえば過去の編集版は全て履歴に保存されるとは知らず、自分が記事を編集すると消えないダメージを作ってしまうと恐れてしまうなど。)

ウィキペディアの理解は利用者ごとに差があり(ある意味ウィキペディア〈リテラシー〉)、格差解決策もさまざまで問題解決は簡単でもたんいつでもありません。 しかし、だんだん理解を深めするたびに、編集初学者にとって壁が低くなり、経験豊富な編集者から見ると新規利用者の誤解に基づく状況への対処の場面はだんだん減って、負荷が軽くなります。

調査と気づき

このフォーカス(課題)では調査結果の気づき2件に基づいています。発見8、発見5。

発見8:方針に悪戦苦戦

調査報告書から以下に転記しました。発見8の全文は、2224ページをご参照ください。

発見8。編集初学者にとって最大の挑戦とは、技術面ではなくコンセプト面です。ウィキペディアの方針を覚えよう、「ウィキペディアが認める」コンテンツを作ろうと四苦八苦します。 編集初学者は確かに編集の手順をナビゲートする課題に直面しましたが……、活動をいちばん妨げたのはウィキペディアへの貢献を規制する構造と方針でした。初学者のほとんどはウィキペディアの方針の守り方と適用の方法、その背後にある理論的根拠に戸惑っていて……

ウィキペディアの方針やルールの解説文書を検索して中身を読もうとする初学者とは、ウィキペディアをずっと編集したいという強い動機がある、または編集の手順が楽しめた人だけでしたが、そういう人たちでも方針がびっしりあり、混乱してしまう点が目につきます。 編集内容が差し戻されたとき、ほとんどの編集初学者はパッと不満を感じて、ウィキペディアの書き方をもっと深く理解するのではなく、新しいコンテンツはそれっきり作らなくなってしまったり、あるいは既存のコンテンツの編集しかしなくなってしまいます。

いちばんわかりにくいコンセプトのうち共通しているものを次にあげます。

  • 検証可能性、出典をつける、とか
  • 特筆性、とか
  • 中立的な観点で「 百科事典にふさわしい形式」で書く(独自研究は載せない)、とか
  • 著作権を守る、特に画像の場合、とか

このような概念の部分の難しさを乗り越えるには、ひたすら挑戦しては失敗し、経験の中から学ぶほかありません……そして/または他の編集者から、建設的なフィードバックを受け取ると前に進めます。

発見5:ウィキペディアのよく分からない規範と陰のコミュニティ

調査報告書から以下に転記しました。発見5の全文は、18ページをご参照ください。

発見5:読者から編集者へ、さらに編集初学者から経験を積んだ編集者の転換を難しくしているのは、ウィキペディアの成り立ちの複雑さと隔絶状態(※)と、その背景にあるコミュニティに起因します。(※complexity and separation)

ウィキペディアの仕組みに混乱する編集初学者は多く、あるいは規範を間違って理解していると気づかずにいました。 編集機能に気付いたり、あるいはまた(ニュース記事や友人あるいはSNSほか経由で)編集は外部の人でも誰でもできるとわかるまで、ウィキペディアの編集は専門家や少人数のグループだけがするものだと思っていた人もいました。 編集を始めた編集初学者のほとんどはウィキペディアの方針とその背後にある理論的根拠を理解しないままで、他の編集者を意識しないか、交流した経験がありませんでした。

編集初学者の一部には、ウィキペディアの共同文化つまり「誰でも編集できる」という事実を根拠に、ウィキペディアの編集を誰かにお薦めされた人がいました……編集をしてみようと思いついた人には、まず最初にウィキペディアの背後にある共同プロセスに興味をそそられて、ウィキペディアがどのように機能するか学ぼうとして、その後に編集を始める人が多かったのです。オフラインのプログラムに参加したり、そういう人は議論のページで発言はしないまま読む専門でひっそりと参加したり……

編集初学者には、ウィキペディアの共同の文化にもっと深く踏み込もうとしてもうまく行かないことが多く、原因はコミュニティの機能がその人たちには見えないようにしてあるためです。 編集初学者で共同編集のプロセスに興味をそそられた人は多くても、コミュニティの議論あるいはその実践方法を知らないままでは、活動参加に飛びついた編集者はほとんどいませんでした。 編集初学者には、オン・ウィキならトークページが何か分からない、あるいはそこで他の編集者と連絡を取る方法が分からない人がたくさんいて……、ましてやオフウィキの集まりに顔を出す人は珍しいです。編集の経験を積んで定着した人なら、オンウィキの議論の場に加わること、オフウィキの集まりに出ることで、ウィキメディアにつぎ込んだ自分の努力を揺るぎないものにする場合がしばしばあります……ウィキペディアのコミュニティ参加の入り口が明確でないか、そういうコミュニティの存在すら知らないなら、編集初学者がそれらの人々と同じ便益を味わうのは困難です。 このような編集初学者と既存のコミュニティの間にギャップがあり、前者がもっと積極的に参加するのも、あるいは経験値のある編集者からすると初学者を補助することも難しくなります。

この課題を選んだ方法

朝鮮語ウィキペディアで事例を蓄積したところ、発見8の順位がだんぜん最高で(第1位もしくは第2位と回答した編集者は8名中7名)、発見5の順位が2番目でした。

チェコ語コミュニティの参加者を集めた対象グループでは、上位5件にこれら2つの発見は両方とも入りました。優先順位の第1位は発見8、発見5は同じく第5位でした。

このプロジェクト担当のコアチームが開いたワークショップに財団職員15名が参加し、最も支持されたのは発見8、発見5は4番目でした。

これら上位の発見は相互に密に関係があり、2つを組み合わせて、1つの課題として扱います。

主なコメント

職員とコミュニティの協議中に出た重要なコメントには、次のものがあります。

発見8

  • 自分たちコミュニティの手で(方針をもっと適切に説明することに加えて)一部の方針自体をゆるめることを試みようと提案する編集者が一部にいても、ほとんどの編集者はそれを実行することと百科事典の品質を保つことは両立しないと感じていました。
  • 方針にかける重みを増やしても、場合によっては良心的な投稿者にこれを守っても良いのかと疑いを持たせるという逆効果になるかもしれません。
  • 考えられる課題の1つに、内部で方針が常に一貫しているとも、どんな場合にも等しく適用されるとも限らない点があります。
  • 「ウィキペディアの流儀」はすべてのプロジェクトで必ずしも同じとは限らないため、均一性を課すような誤ったツールを作らないように注意が必要です。
  • 方針の重要性を高めては、社会変革者を遠ざけるかもしれず(社会的大義に寄せる情熱に基づく新規利用者)、その人たちは根本質的に論争自体が目的であって、ウィキペディアの一部の方針には同意しない可能性があります。重要なことは意思疎通を試みることであり、ルールは変更が可能、編集初学者も自分の意見を主張できると伝わることかもしれません。
  • 多くの人は、方針の一般的な説明よりも、具体的で文脈に応じたガイドを提要する方が解決策として優れていると提案し(たとえば新規利用者の加筆に参照がない場合に検出して保存の前に脚注の追加を提案する機能など)、他の人たちは問題の自動検出の正確性、煩わしさより有用性が上回るかどうか懐疑的でした。
  • 現状では、さまざまなヘルプや方針のページに対する読者の理解度をコミュニティが把握する現実的な仕組みはありません。

発見5

  • ウィキペディアの手順を知った読者は、コンテンツに寄せる「信頼」が下がる可能性があります。[1]
    • しかしながら実際には有益であるかもしれません。品質の認識が下がるなら、より多くの人々が編集を始める可能性があります。経験豊富な編集者ほど、しばしばウィキペディアのコンテンツに対して批判を重ねています。
    • この状況は、情報リテラシー教育に関心のある教育関係者や図書館員の高い関心を引くかもしれません。
  • 朝鮮語版ウィキペディアにはNamuwikiコミュニティ(ナムウィキ)というライバルがあり、そちらの方が読者の目につきやすいのです。ホームページはほぼ全域をコミュニティ用機能が埋め尽くしていて(ウィキペディアのホームページはコンテンツのみ掲載)、記事は肩がこらない感じで意見を全面に出してあり、まるで投稿者個人の声が聞こえてくるみたいです。
  • 編集者の中にはコミュニティに入りたくない、あるいは投稿したからと言って大っぴらに挨拶してもらわなくても良いと感じる人がいます。アカウント登録をして活動しても、何かを押し付けられる状況は避けなければなりません。
  • ウィキペディアの性質について、最初からあまりにも多くの情報を見せては、人々を怖がらせてしまいそうです。段階的な導入が重要です。
  • 発見2に関連のある気づきでは、ウィキペディアが卓越しているせいで、編集者になりそうな人はしばしば、自分には編集する資格がないと感じています。
  • 最近の調査で一般社会の人がウィキペディアを知っているか、どう使っているか調べたところ、同様の問題が確かに見られました。
  • ウィキペディアの共同作業について人々に示す時、技術の初歩のみでは(トークページの説明など)、それが実際にどのように機能するか、または実際にコミュニティに参加する方法は伝わらないかもしれません。
  • これを表明しようとすると他の人の「ウィキペディアはSNSではない」という考えと衝突しかねません。

脚注

  1. W. Ben Towne et. al (2013), "Your process is showing: controversy management and perceived quality in Wikipedia." CSCW '13.(W・ベン他「あなたの手順は丸見え:ウィキペディアにおける紛争管理と品質の認識」『2013年CSCW』、2013年。)